698政治経済学・経済史学会編『歴史と経済』第221号

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2013年10月発行の最新号。学会報告デビューは旧名の土地制度史学会だった。最近は本誌を購読するだけの優良ならぬ有料会員になってしまっている。
いつもながら書評を眺めこんな本が出ていると初めて知ることが多い。本誌の書評対象本は翻訳を含む和書が大部分を占める。洋書の歴史書も数多く出ているはずだから,洋書の書評が少ないのはなぜだろうとふと思った。
加藤「明治中期西日本地域における養蚕伝習所の活動と養蚕技術」を見ていて,明治期における繭生産で愛媛県が有数であったことをあらためて確認できた。「養蚕の西漸」と言われ東から西に普及した蚕糸業で,明治中期では繭の質の評価も高くなり,なかでも「尾張,伊勢,丹波,伊予,伯耆,出雲」は「エキストラ格の生糸」を製造していたという(孫引き)。1924年愛媛県の繭生産量は長野県,群馬県福島県に次いでいた。
加藤稿は「養蚕の西漸」における養蚕伝習所の役割に注目したもので,養蚕技術普及が地域名望家によってだけではないことを指摘していた。

ジャンル 執筆者 タイトル
論説 平井 進 19世紀北西ドイツの農村ゲマインデ制の変革――自治参加資格と家屋・土地保有要件――
- 渡辺千尋 1920年代フランスにおける外国人労働者の導入と国家の対応――移民常任省間委員会の議論を手がかりとして――
研究ノート 加藤信行 明治中期西日本地域における養蚕伝習所の活動と養蚕技術
書評 柳澤 治 土肥恒之著『西洋史学の先駆者たち』
- 菅沼主輔 池上彰英著『中国の食糧流通システム』
- 柳澤 遊 浅田進史著『ドイツ統治下の青島――経済的自由主義と植民地社会秩序――』
- 今久保幸生 幸田亮一著『ドイツ工作機械工業の20世紀――メイド・イン・ジャーマニーを支えて――』
- 小林正人 廣田義人著『東アジア工作機械工業の技術形成』
- 米山 秀 松村幸一著『一六世紀イングランド農村の資本主義発展構造』
- 森 宜人 中野忠・道重一郎・唐澤達之編『一八世紀イギリスの都市空間を探る――「都市ルネサンス」論再考――』
- 西牟田祐二 独立専門家委員会スイス=第二次大戦第一部原編,黒澤隆文編訳,川崎麻弥子・穐山洋子訳著『中立国スイスとナチズム――第二次大戦と歴史認識――』
- 安 秉直 石井寛治著『帝国主義日本の対外戦略』
- 加来祥男 福澤直樹著『ドイツ社会保険史――社会国家の形成と展開――』
- 平本 厚 沢井実著『近代日本の研究開発体制』
- 粕谷 誠 小林和子著『日本証券史論――戦前期市場制度の形成と発展――』
- 藤岡 惇 延近充著『薄氷の帝国 アメリカ――戦後資本主義世界体制とその危機の構造――』
- 横山英信 山崎志郎著『物資動員計画と共栄圏構想の形成』
- 久末亮一 Shizuya Nishimura, Toshio Suzuki and Ranald Michie (eds); The Origins of International Banking in Asia: The Nineteenth and Twentieth Centuries
- 須永 隆 岩井淳編著『複合国家イギリスの宗教と社会――ブリテン国家の創出――』
会報 - 2012年度東海部会研究会報告
- - 2013年度九州部会研究会報告
- - 2013年度春季総合研究会報告:東北地方「開発」の系譜――国際的景気に着目して――
英文抄録 - -