1176持続可能な農山村の地域づくり:中国地方の取り組みを事例に

日本科学者会議編『日本の科学者』2020念10月号(第55巻第10号,通巻633号)の特集を読んだ。

-(特集)谷口憲治「農業の多面的価値活用による農村振興——島根県を事例とするその実現要因——
-(特集)駄田井久「バイオマス資源を活かした付加価値の創出——バイオマスタウン真庭市生ごみ資源化事業を事例に——
-(特集)福田恵・長坂格「山間地域における移住者の社会的役割——その継承と生成に着目して——」
-(特集)多田憲一郎「中山間地域における「まちづくり会社」の可能性——鳥取市鹿野町を事例として——」
-(特集)山本善積「中山間地域づくりの都市域への波及——山口県周南市の事例——」
-(特集)鈴木力「阿武町の地方創生事業と相反するイージス・アショア——住民参加型の地域づくり事業——」
-(論文)藤井孝哉「地域政策としての「地域おこし協力隊」をめぐる制度の非対称性——愛媛県における地域おこし協力隊の活動——

中山間地域の典型とされ,また,「過疎」という言葉を生み出した中国地方の取り組みを事例として,それぞれの地域の課題と課題克服のための対策,住民自治に着目した論稿である。

谷口稿は農村振興の「新島根方式」や「しまろく」の特徴をおさえ,農村振興策の実現要因を探っている。駄田井稿は岡山県真庭市で進むバイオマス利活用による付加価値創出を住民意識調査から明らかにしている。福田・長坂稿は島根県匹見町(「過疎」発祥の地)を対象に移住者による移住経験の継承と地域生活の翻訳にその役割をもとめている。多田稿は鳥取市鹿野町での地域住民主導型第3セクターまちづくり会社」が果たした役割を検証している。山本稿は山口県阿武町で長年取り組まれてきた地方創生事業や住民主体の地域づくりが町長をしてイージス・アショアへの反対を叫ばせたことを追っている。藤井稿は2019年度に愛媛県内で活動していた地域おこし協力隊員へのアンケート調査から隊員の起業志向が強いことや関係人口という新しい要素によって制度・制度設計の再検討を提言している。

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