845マーク・ピーターセン著『実践 日本人の英語』

書誌情報:岩波新書(1420),viii+225頁,本体価格760円,2013年4月19日発行

実践 日本人の英語 (岩波新書)

実践 日本人の英語 (岩波新書)

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『日本人の英語』(岩波新書,1988年,[isbn:9784004300182])から四半世紀である。『続』(同,1990年,[isbn:9784004301394])から23年,『心にとどく英語』(同,1999年,[isbn:9784004306047])からでも14年だ。日本語話者の多くに英語特有の表現や考え方を広めた著者の最新作が本書である。
評者にもっとも印象的だったのは大学名の英語表記であり,そこから想を得てブログでとりあげたことがあった(「日本の女子大学の英語表記」→https://akamac.hatenablog.com/entry/20090311/1236780361,「日本の大学の英語表記」→https://akamac.hatenablog.com/entry/20090307/1236417940)。
著者は,英語は「常に「論理的関係」に気を配る」(165ページ)と指摘しているが,英語が論理的言語で日本語が非論理的言語と主張しているわけではない。そもそも非論理性な言語があるわけではなく,論理性の表現にそれぞれの言語の特徴がある。「カタコト英語」から脱するためのポイントとして著者が挙げるのは,(1)文法的誤りがない,(2)不完全な断片やぶつ切りにしない,(3)論理的叙述方法に気をつける,(4)日本語表現に引きずられない,(5)語彙選択や語順に注意する,だ(184-5ページ)。
講義や科学論文の添削から得た間違いやすいあるいは変な英語,英語として理解不能な実例をもとにした英語表現論は,日本語話者にとってはなるほどと頷くばかりだ。ヘンな日本語を話す外国人は身近に一杯いる。「日本語・英語の論理を少しずつでも身につけていくしかない」(155ページ)のだ。