書誌情報:有斐閣アルマ,xiv+344頁,本体価格2,200円,2013年7月25日発行
- 作者:丸川 知雄
- 発売日: 2013/07/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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いまなお続く日中間の政治的軋轢とは別に,日々の経済関係ニュースに頻繁に登場するのが中国である。世界の工場・中国の存在感はいや増しているという実感がある。
断片的な寄木細工で隣国の事情を組み立てている評者の知識の限界を感じていて,中国経済についての全体像を知りたいという思いがあった。生協の書籍部で目に飛び込んできたのが本書だ。
中国経済における過去と将来,計画経済と市場経済という概括を与えたうえで,労働市場,財政・金融,技術,国有企業,外資系企業,民間企業という主要な経済要素の特徴を指摘している。その中国経済が盤石どころか「罠」を内蔵しているとして国内需要,所得格差,環境問題,対外不均衡問題を取り上げている。
思想的背景に関心をもつ評者からは,毛沢東の思想的伝統が「儒教的な人間観」・「性善説」(50ページ)だけだったのか,あるいは「改革開放政策の背後にはアダム・スミス的な社会観があったと言える」(51ページ)とする根拠は何かなど本書の趣旨から外れた枝葉のところで疑問として残る。
現代中国を知るために表と図(各章の扉には象徴的な写真)を多用しており,一気に読める入門的テキストである。表・図の元データは,ウェブサイト(→http://web.iss.u-tokyo.ac.jp/~marukawa/ccepage.html)からダウンロードできる。メインページ「中国産業研究」(→http://web.iss.u-tokyo.ac.jp/~marukawa/)も見所・読み所が多い。
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