書誌情報：ほるぷ自伝選集／女性の自画像II-13，238頁，本体価格不明，1983年12月10日発行
[isbn:9784879851017]（青春社版）
1928年倉敷紡績万寿工場に女工の教化係として就職し，1930年11月の倉敷紡績全工場ストライキで馘首された。暉峻義等とは教化係の時に知り合い，その後の就職では紹介状を書いてもらった。宇和島の愛媛県農村結核予防模範地区指導所で看護婦として勤めている時に，松山に来た暉峻に兼務していた満州開拓科学研究所の満州開拓団の結核予防業務に誘われ（1944年8月），戦後も長く中国に留まり（13年間），1958年5月の第19次引き揚げで帰国した。
著者は，大原孫三郎についてこう書いている。
その間に学んだことは，紡績婦人労働者の団結の素晴らしさ及び大原美術館や，中央病院，そして労働科学，社会問題，農業科学の三研究所をもった，先代社長，大原孫三郎氏の奇特な業績も個々の善意も，明治中期からの一紡績資本家として，貧しい農村から日本特有の人買いにも近い募集員制度の下で酷薄な搾取を土台にしたものであり，笑いの止まらない儲けの一部を社会進歩に役立てたに過ぎないということであった。（38ページ）
わたしは男子の教化係高木氏と大原社長に呼び出された。彼はことあらためて問いただしはせず，「時代ですよ，大学へ行っている息子（子総一郎）はいいますよ「銀行，金融関係の仕事には手をだすな」と。北海道も雪ですな。」わたしは黙って社長の顔を見た。資本主義社会での階級矛盾は，個人ではどうする事も出来ない鉄則で回る歯車であること。資本家個人の善意とか温情などは，もうけ主義の恥部をおおう“いちじくの葉”に過ぎないことなどを思った。（改行）わたしは多くの女工さんのあとを追って，地下活動にはいった。（49-50ページ）
大原孫三郎のもとで労働科学研究所の所長だった暉峻との関係からは，「酷薄な搾取を土台にした」会社に籍を置いた自分自身の矛盾には敢えて触れず大原と暉峻とを意識的に区別している。
著者については，札幌女性史研究会編『北の女性史』（北海道新聞社，1986年，[isbn:9784893634665]）［評者未読］や著者とともに「地下活動」をともにし，松山郊外の愛媛県立結核療養所翠松園で再会した桑原武英著『治安維持法とわたし——不屈の抵抗と青春を語り継ぐ——〈戦前編〉』（日本機関紙出版センター，2007年，[isbn:9784889008470]）［評者未読］が触れている。また，「棧敷よし子を追っかける」プロジェクト編「ジョゼ in 北海道：棧敷よし子を追いかける旅01（本編）」がある（→https://www.youtube.com/watch?v=EKQw3JVZgR4）。
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