1790園田茂人著『不平等国家 中国ーー自己否定した社会主義のゆくえーー』

書誌情報:中公新書(1950),200頁,本体価格740円,2008年5月25日発行

あえてすこし前の中国論を読んでみた。社会主義革命によって「止揚」した階級社会が市場経済化の波によって学歴や都市・農民戸籍,男女平等,都市中間層に新しい格差をもたらしていることを分析している。類書と異なる特徴は,実際に手掛けた都市調査,基層選挙調査,外来人口調査,都市住民調査などをもとにしていることである。
社会主義建設過程で国家権力による上からの平等化を教育,職業,所得で実現したはずの中国が,社会主義市場経済の要素を絡ませながら新しい格差・不平等を生み出していることを明らかにしている。
和解社会を標榜した胡錦濤政権までを対象にしているが,現在の習近平政権にも通底する中国の問題を知ることができる。