127大塚金之助文庫

以前のエントリーで「「プロイセンの日本遠征1860年-1861年」・「ベルリン国立図書館所蔵日本コレクションのあけぼの」」（→https://akamac.hatenablog.com/entry/2022/01/06/141808）について触れた時に，同じドイツのアジア学に関するポータルサイト “CrossAsia” に「大塚金之助文庫」があることを知った。

大塚金之助一橋大学名誉教授（1892.5.15-1977.5.9）の文庫は，1962年から1986年にかけて当時のドイツ民主共和国（旧東ドイツ）国立図書館（現ベルリン国立図書館）に大塚蔵書から寄贈された和書を中心としたコレクションだ（和書約4,600タイトル，洋書約140タイトル，雑誌約150種）。21018年9月3日に公開されていた。

-日本語ページ→https://themen.crossasia.org/otsuka-collection/?lang=ja
-ドイツ語ページ→https://themen.crossasia.org/otsuka-collection/?lang=en

大塚蔵書のうち外国書は一橋大学に寄贈され（8,205冊），大塚文庫として整備されている（→https://www.lib.hit-u.ac.jp/retrieval/collections_bunken/collections/otsukapapers/）。

-関連エントリー
--長尾真文庫（京都大学桂図書館）→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/12/17/152205
--中井えり子・松波京子編『水田文庫貴重書目録補遺：水田珠枝文庫貴重書所収』のミニ・シンポ→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/12/13/142535
--山本明コレクション→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/07/05/154053
--東洋文庫・モリソン文庫→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/05/20/142724
--中井えり子・松波京子編『水田文庫貴重書目録補遺：水田珠枝文庫貴重書所収』→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/06/11/155701
--『小林昇文庫（蔵書）目録』電子版→https://akamac.hatenablog.com/entry/20160909/1473427554
--中井えり子編『名古屋大学附属図書館蔵　水田文庫貴重書目録』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20150722/1437572563
--立教大学経済学研究会『小林昇文庫（蔵書）目録』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20140526/1401112612
--服部英太郎・文男遺文庫開設記念シンポジウム→https://akamac.hatenablog.com/entry/20131107/1383834962
--水田洋文庫・永井義雄文庫→https://akamac.hatenablog.com/entry/20130621/1371823850
--中井えり子著『水田洋文庫概要』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20130501/1367416691
--水田洋文庫図書の挟み込み資料・蔵書票・蔵書印・書込→https://akamac.hatenablog.com/entry/20120429/1335707192
--ふたたび水田洋文庫について→https://akamac.hatenablog.com/entry/20110126/1296050090
--森嶋通夫文庫が京都に――コレクション雑感――→https://akamac.hatenablog.com/entry/20100619/1276958375
--サミュエルソン文書がエール大学へ→https://akamac.hatenablog.com/entry/20091219/1261195051
--龍谷大学の「山田盛太郎文庫」→https://akamac.hatenablog.com/entry/20090321/1237611170
--西洋近代思想と永井文庫→https://akamac.hatenablog.com/entry/20080927/1222509968

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--ようやくストリーミング放送（全日本卓球選手権大会）→https://akamac.hatenablog.com/entry/20160111/1452521370
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--男女とも中国優勝（卓球ワールドチームカップ）→https://akamac.hatenablog.com/entry/20150111/1420988378
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--ニッタクのエルサルバドルでの卓球普及活動→https://akamac.hatenablog.com/entry/20130111/1357914402
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--大学犬はなちゃんの日常（その212）→https://akamac.hatenablog.com/entry/20110111/1294752595
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--日本の社会科学の知的伝統→https://akamac.hatenablog.com/entry/20100111/1263221103
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--本田由紀著『「家庭教育」の隘路――子育てに強迫される母親たち――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20090111/1231661849
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--佐藤優著『私のマルクス』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20080111/1200044556

1285近鉄特急「ひのとり」「しまかぜ」で電子書籍読み放題サービス

近鉄特急「ひのとり」と「しまかぜ」の全車両で，1月11日から電子雑誌読み放題サービス「ビューン読み放題スポット」と書籍要約読み放題サービス「flier」が無料で利用できる（→https://www.kintetsu.co.jp/all_news/news_info/yomihoudaikaisi.pdf）。

電子雑誌読み放題サービス「ビューン読み放題スポット」は週刊誌やファッション誌，おでかけ情報誌など，600誌以上の雑誌が 読み放題のサービスだ。また，書籍要約読み放題サービス「flier」は話題のビジネス書や教養書・名著が 1 冊10分で読める本の要約 サービスで，出版社確認済みの要約が2600冊以上ラインナップしている。

鉄道関係での電子情報利用は，10年ほど前からメキシコシティ，モスクワ，北京，ニューヨーク，シカゴ，ローマなどで実現している。日本でも都市部を中心に広がるかもしれない。

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--週刊 「 司馬遼太郎 街道をゆく 」 32号 9/4号 仙台・石巻 [雑誌] (朝日ビジュアルシリーズ) →https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/01/10/152328
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--『季刊　読書のいずみ』第161号→https://akamac.hatenablog.com/entry/2020/01/10/233000
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--難読名字（その29）：居ケ内→https://akamac.hatenablog.com/entry/20190110/1547130457
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--「みまパンチ」の秘密→https://akamac.hatenablog.com/entry/20180110/1515591952
-5年前のエントリー
--『季刊　読書のいずみ』第149号→https://akamac.hatenablog.com/entry/20170110/1484056295
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--明日から天皇杯・皇后杯平成27年度全日本卓球選手権大会（一般・ジュニアの部）→https://akamac.hatenablog.com/entry/20160110/1452415856
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--男子ベスト8，女子ベスト4（卓球ワールドチームカップ）→https://akamac.hatenablog.com/entry/20150110/1420898656
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--森薗，浜本決勝進出ならず（卓球ワールドツアー・グランドファイナル）→https://akamac.hatenablog.com/entry/20140110/1389362950
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--文部科学省ミュージアム「情報ひろば」企画展示【福島大学・鹿児島大学】→https://akamac.hatenablog.com/entry/20130110/1357828279
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--日本学士院ニュースレター第8号→https://akamac.hatenablog.com/entry/20120110/1326203896
--東北の大学頑張れ！（その2）→https://akamac.hatenablog.com/entry/20120110/1326203897
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--松尾匡著『図解雑学　マルクス経済学』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20110110/1294671690
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--大学犬はなちゃんの過去（その7）→https://akamac.hatenablog.com/entry/20080110/1199962397

780新聞広告の漢字事件または「「歳」と「才」」二十五論

ある全国紙の12面にはある健康機器の全面広告があった。プロスキーヤー89歳，インストラクター90歳，大学名誉教授71歳の写真と談話付きだ。「人生100年時代に，1日1回23分。座ったまま，テレビを見ながら歩くときに使う筋肉をトレーニング。」きちんとしていてよく効きそうだ。

14面には飲んで効く医薬品の全面広告。小さい字で書いてある「用法・用量」の箇所には，「成人（15歳以上）」，「11歳以上15歳未満」，「11歳未満」と正しい表記だ。以前取り上げたどこかのドリンク剤とは違う。

同じ全国紙の18面にもこれまで何回か目にした「生姜シロップジェリー」の全面広告だ。売れている理由は，「36才の女性社員」にあるらしい。インタビュアーは「41才」のようだ。全面広告の締めは一般利用者ふたりの声だ。こちらは「64歳」と「38歳」だ。この混在は女性の「キレイと雰囲気」に良くないと思う。と書いて，テレビ番組覧の26面左下にも「36才」表記の「生姜シロップジェリー」の広告が出ていた。

20面には本論の瀬戸内寂聴論にいくつかの「歳」表記とその下には「99歳の瀬戸内寂聴…」で「最後の語り下ろし！」本の広告，24面には橋幸夫コンサートの広告があり，「80歳の誕生日」。第1面に戻って「●●人語」には「68歳」表記があった。

「生姜シロップジェリー」の「キレイと雰囲気」が際立っていた。

-関連エントリー
--新聞広告の漢字事件または「「歳」と「才」」二十四論→https://akamac.hatenablog.com/entry/2022/01/05/144319
--新聞広告の漢字事件または「「歳」と「才」」二十三論→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/12/27/145940
--新聞広告の漢字事件または「「歳」と「才」」二十二論→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/12/02/142032
--新聞広告の漢字事件または「「歳」と「才」」二十一論→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/10/29/144859
--新聞広告の漢字事件または「「歳」と「才」」二十論→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/09/17/164709
--公共放送での年齢の「才」表記にもの申す→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/09/10/142428
--新聞広告の漢字事件または「「歳」と「才」」十九論→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/09/02/143136
--新聞広告の漢字事件または「「歳」と「才」」十八論→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/08/27/150913
--新聞広告の漢字事件または「「歳」と「才」」十七論→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/07/20/142049
--新聞広告の漢字事件または「「歳」と「才」」十六論→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/07/16/150501
--新聞広告の漢字事件または「「歳」と「才」」十五論→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/07/08/151042
--新聞広告の漢字事件または「「歳」と「才」」十四論→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/07/01/142143
--新聞広告の漢字事件または「「歳」と「才」」十三論→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/06/19/151426
--新聞広告の漢字事件または「「歳」と「才」」十二論→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/06/05/144734
--新聞広告の漢字事件または「「歳」と「才」」十一論→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/05/10/143019
--新聞広告の漢字事件または「「歳」と「才」」十論→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/05/07/131059
--新聞広告の漢字事件または「「歳」と「才」」九論→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/04/17/233000
--新聞広告の漢字事件または「「歳」と「才」」八論→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/04/03/154059
--新聞広告の漢字事件または「「歳」と「才」」七論→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/04/01/140844
--新聞広告の漢字事件または「「歳」と「才」」六論→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/03/19/141708
--新聞広告の漢字事件または「「歳」と「才」」五論→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/03/13/154508
--新聞広告の漢字事件または「「歳」と「才」」四論→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/02/19/140314
--新聞広告の漢字事件または「「歳」と「才」」三論→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/02/19/140314
--新聞広告の漢字事件または「「歳」と「才」」再論→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/02/05/150649
--「歳」と「才」→https://akamac.hatenablog.com/entry/20180918/1537277224
--常用漢字の音訓と府県名→https://akamac.hatenablog.com/entry/20170517/1495028496
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1583原田マハ著『ゴッホのあしあと』

書誌情報：幻冬舎文庫（は-25-3），169頁，本体価格500円，2020年8月10日発行

ゴッホのあしあと (幻冬舎文庫)

• -

新書版（2018年5月刊）の文庫版。ゴッホが辿った跡を資料と足で追い，出来上がった作品が『たゆたえども沈まず』だった。作品の筋や言葉に込めた著者の思いだけでなく，あらためてゴッホの生涯と作品が蘇ってきた。同時に，マハ効果で，『たゆたえども沈まず』を再読した感じにもなった。

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  • 原田マハ著『たゆたえども沈まず』→https://akamac.hatenablog.com/entry/2022/01/03/094627
  • 原田マハ著『リーチ先生』→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/07/06/162020
  • 『季刊　読書のいずみ』第147号→https://akamac.hatenablog.com/entry/20160629/1467207917

• 関連エントリー(2)
  • ゴッホの写真→https://akamac.hatenablog.com/entry/20181130/1543584058
  • H・アンナ・スー編（千足伸行監訳冨田章・藤島美菜訳）『ゴッホの手紙――絵と魂の日記――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20150207/1423319446
  • 「クレラー＝ミュラー美術館所蔵作品を中心に：印象派を超えて　点描の画家たち――ゴッホ，スーラからモンドリアンまで――」展および図録→https://akamac.hatenablog.com/entry/20131019/1382192063
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  • オルセー美術館展2010「ポスト印象派」（デジタル情報）→https://akamac.hatenablog.com/entry/20100611/1276264619
  • マリー＝アンジェリーク・オザンヌ，フレデリック・ド・ジョード著（伊勢英子・伊勢京子訳）『テオ　もうひとりのゴッホ』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20080125/1201254868
  • フィラデルフィア美術館展および図録→https://akamac.hatenablog.com/entry/20071024/1193216972
  • ナタリー・エニック著（三浦篤訳）『ゴッホはなぜゴッホになったか――芸術の社会学的考察――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20071009/1191922358

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  • リヴィエル・ネッツ／ウィリアム・ノエル著（吉田晋治監訳）『解読！　アルキメデス写本――羊皮紙から甦った天才数学者――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20090108/1231425279
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  • 南充彦著『中世君主制から近代国家理性へ』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20080108/1199787192

1582宮本常一・山本周五郎・楫西光速・山城巴監修『日本残酷物語5 近代の暗黒』

書誌情報：平凡社ライブラリー（112），552頁，本体価格1,400円，1995年8月15日発行

日本残酷物語5 (平凡社ライブラリー)

『日本残酷物語』シリーズは，初版（1959年〜1961年）および第2版（1972年）と版を重ね，第3版となった（以下，宮本他編（1961・1972・1995）と略記）。

労研饅頭の歴史を調べていて気になった箇所があった。「労研マンジュウ」の項目下で，1ページほどを費やしてこう書いている。

「倉敷紡績では，女工の搾取戦術を研究するために，労働科学研究所を作らせ，労研マンジュウ（饅頭：引用者注）というものを発明させた。女工が朝起きてフトンをあげ，顔を洗い，髪をゆい，食堂に出て朝食をして，それから工場に出て仕事につくのでは二時間はかかる。資本家にとってそれは莫大な損失である。そこで，女工が朝起きて顔を洗うと，さっそく点検してその場所で労研マンジュウを配給する。女工たちは，そのマンジュウをほおばりながら髪をゆい，それを食べながら工場に出て仕事につく。それだけで一時間はもうかるというのである。こうして女工たちが一時間早く仕事につくことによってボロもうけするのは紡績資本家だけである。ところがそうした搾取方法がそれにとどまらず，工員に滅私奉公を強迫した労働強化や日本の民衆を餓死に追いこんだ，一合八勺の配給米のもとであったという」（宮本他編（1961・1972・1995），165ページ）。

さきに安田徳太郎著『二十世紀を生きた人びと——安田徳太郎選集——』（関連エントリー参照，以下，安田（2001）と略記）を紹介した際に安田の「医学の階級性」について触れた。この安田（2001）に「続医学の階級性」（初出：『医学の階級性』アテネ文庫，1948年7月）が収録されている。その一節を引用しよう。

「私は『中央公論』に「医学の階級性」という論文を出したことがある（1938年8月号：引用者注）。このなかで，私は当時流行した資本家攻勢の産業合理化問題にふれて，大原孫三郎の倉敷紡績会社では女工の搾取戦術を研究するために，暉峻義等という衛生学者に労働科学研究所なるものを作らせ，「労研饅頭」なるものを発明させた。女工が朝起きて布団をあげ，顔を洗い，髪を結い，食堂に出て飯を食って，それから工場に出て，仕事につくまでは二時間は食われてしまう。資本家にとってはそれこそ「時は金なり」である。そこで，この貴重な時をかせぐために，女工が朝起きて，顔を洗うと早速点呼して，その場で「労研饅頭」を支給する。女工はその「饅頭」をほほばりながら，髪を結い，それを食いながら工場に出て，早速仕事につく。それだけでゆうに一時間はもうかる。「労研饅頭」はそこいらの紡績工場の朝飯よりもカロリーは高いし，栄養も多い。なにしろ，労働科学研究所長が発明された世界に誇るべき代物である。ところで，女工諸君が「労研饅頭」をほほばって一時間早く仕事につくことによって，ぼろもうけするのは，大原孫三郎という紡績資本家だけである。その儲けから割り出せば，労研の一握りの｢番犬｣どもを養う費用などは高が知れている」（安田（2001），415〜6ページ，初出は『医学の階級性』アテネ文庫（弘文堂），1948年7月）

読み比べてみれば容易にわかるように，宮本他編（1961・1972・1995）は安田（2001）［初出は安田『医学の階級性』アテネ文庫（弘文堂），1948年7月）と瓜二つである。安田（2001）を編集した息子の安田一郎は，「安田の（安田徳太郎の：引用者注）この論文のこの箇所は宮本，山本他『日本残酷物語，近代の復権』5巻，1961年（平凡社ライブラリー112番として復刻）（宮本他編（1961・1972・1995）を指す：引用者注）に引用されている」（安田（2001），417ページ）としているが，宮本他編（1961・1972・1995）は引用したことをどこでも明記しておらず引用符もない，安田（2001）の文章の剽窃，である。

宮本他編（1961・1972・1995）は27名（全員の氏名の記述あり）の執筆協力（執筆）の原稿をもとに，「編集部が大幅に再構成・リライトした」（扉裏）とあり，労研饅頭箇所を含む｢第一章　根こそぎにされた人々」の「女工の青春」の原文作成者は不明である。

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--安田徳太郎著『二十世紀を生きた人びと——安田徳太郎選集——』 →https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/12/22/170221
--労研饅頭90年（その2）→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/11/21/233000
--労研饅頭90年→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/09/25/150126
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--労研饅頭と松山夜学校→https://akamac.hatenablog.com/entry/20151119/1447940698
--『第3回大原孫三郎・總一郎研究会報告書』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20150730/1438262887
--第3回大原孫三郎・總一郎研究会→https://akamac.hatenablog.com/entry/20141206/1417872852
--大原孫三郎傳刊行会編『大原孫三郎傳』（電子版）→https://akamac.hatenablog.com/entry/20141104/1415108569
--三浦豊彦著『暉峻義等――労働科学を創った男――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20140918/1411050766
--「労研饅頭」きらめき奨励賞受賞→https://akamac.hatenablog.com/entry/20130302/1362234926
--兼田麗子著『大原孫三郎――善意と戦略の経営者――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20130104/1357309805
--労研饅頭エントリーまとめ→https://akamac.hatenablog.com/entry/20121008/1349706368
--労研饅頭本店改装オープン（その2）→https://akamac.hatenablog.com/entry/20101126/1290779206
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--労研饅頭異聞（その4）→https://akamac.hatenablog.com/entry/20091209/1260348441
--同学社『TONGXUE（トンシュエ）』第38号→ https://akamac.hatenablog.com/entry/20091008/1255007215
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--デニス・ダニエルソン著（田中靖夫訳）『コペルニクスの仕掛け人――中世を終わらせた男――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20090107/1231338597
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--平田清明著作目録ブログ版（1965）→https://akamac.hatenablog.com/entry/20080107/1199698849

1284「プロイセンの日本遠征1860年-1861年」・「ベルリン国立図書館所蔵日本コレクションのあけぼの」

ドイツのアジア学に関するポータルサイト “CrossAsia” に，プロイセン・日本間の修好通商条約締結160周年を記念して，同条約締結のためのプロイセンの来日と幕府との交渉の様子を紹介する「プロイセンの日本遠征 1860年-1861年」およびプロイセン王立図書館（現在のベルリン国立図書館）が収集した手稿・印刷資料・地図等を紹介する「ベルリン国立図書館所蔵日本コレクションのあけぼの」が公開された（情報源：カレントウェアネス・ポータル→https://current.ndl.go.jp/node/45434）。

-「プロイセンの日本遠征 1860年-1861年」→https://themen.crossasia.org/expedition-japan/?lang=ja
-「ベルリン国立図書館所蔵日本コレクションのあけぼの」（タイトル総数105点，電子化タイトル103点）→https://themen.crossasia.org/japan-sammlung/?lang=ja

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--大原美術館蔵「ベートーヴェン像」→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/01/06/153011
-2年前のエントリー
--卓球オリンピック代表決まる→https://akamac.hatenablog.com/entry/2020/01/06/222007
 -3年前のエントリー
--中見真理著『柳宗悦――「複合の美」の思想――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20190106/1546778824
-4年前のエントリー
--中国卓球協会の国際大会選考基準→https://akamac.hatenablog.com/entry/20180106/1515246140
-5年前のエントリー
--二刀流→https://akamac.hatenablog.com/entry/20170106/1483709694
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--回文銀行→https://akamac.hatenablog.com/entry/20160106/1452089262
-7年前のエントリー
--『ライブラリー・リソース・ガイド（LRG）』第9号／2014年秋号→https://akamac.hatenablog.com/entry/20150106/1420551142
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--山口拓美著『利用と搾取の経済倫理――エクスプロイテーション概念の研究――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20140106/1389017305
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--昭文社ムック『工場見学　中国・四国』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20130106/1357477233
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--高松良睛著『もう一つの坂の上の雲　鉄道ルート形成史』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20120106/1325861895
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--大学犬はなちゃんの日常（その211）→https://akamac.hatenablog.com/entry/20110106/1294322346
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--東アジア最古の縄文期埋葬犬の骨不明と「失敗史」（五論）→https://akamac.hatenablog.com/entry/20100106/1262770039
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--全教員の任期が1年の大学→https://akamac.hatenablog.com/entry/20090106/1231249294
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--おさぼり

779新聞広告の漢字事件または「「歳」と「才」」二十四論

「女性週刊誌No.1」の『女性セブン』（小学館）1月20日・27日号は2022年も絶好調だ。

「スクープ　船越英一郎（61）　泥沼離婚劇から5年　再婚決めた「姉御肌」22才年下女優　撮」

左端には「162万部突破！」の佐藤愛子著『九十八歳。戦いやまず日は暮れず』（[isbn:9784093965521]）の広告を縦に入れてある。「22才」と「九十八歳」とが同じ小学館の出版物の広告に同居している。

同じ全国紙の別面には『フライデー　ゴールド』（講談社）1月21日号の広告があり，「京佳　22歳　決意の完全フルヌード」の文字が踊っていた。

その結果，新聞社は広告とはいえ「歳」と「才」とのふたつの表記を許容してしまっている。

-関連エントリー
--新聞広告の漢字事件または「「歳」と「才」」二十三論→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/12/27/145940
--新聞広告の漢字事件または「「歳」と「才」」二十二論→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/12/02/142032
--新聞広告の漢字事件または「「歳」と「才」」二十一論→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/10/29/144859
--新聞広告の漢字事件または「「歳」と「才」」二十論→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/09/17/164709
--公共放送での年齢の「才」表記にもの申す→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/09/10/142428
--新聞広告の漢字事件または「「歳」と「才」」十九論→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/09/02/143136
--新聞広告の漢字事件または「「歳」と「才」」十八論→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/08/27/150913
--新聞広告の漢字事件または「「歳」と「才」」十七論→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/07/20/142049
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--新聞広告の漢字事件または「「歳」と「才」」十論→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/05/07/131059
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